哲学者と人類学者の間で交わされる「病」をめぐる言葉の全力投球の一冊です。
「もし明日、急に重い病気になったら―― 見えない未来に立ち向かうすべての人に」
サブタイトルも少し重めでしたが、表紙デザイン、書体が軽めでしたので、さらっと読める本と思い手に取りました。
ところが、予想を大きく裏切られてしまうほど重く、壮絶な部分も多く、著者自身の病気を通じて、まさに哲学「生きざま」を考えさせられる良書でした。
がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が、死と生、別れと出会い、そして出会いを新たな始まりに変えることを巡り、20年の学問キャリアと互いの人生を賭けて交わした20通の往復書簡が本書の構成となっています。
こんなあなたにオススメです
・がんの治療をしている
・家族が重い病気を患っている
・友人、知人ががん宣告をうけた
オススメ、共感を得たフレーズ
1便 急に具合が悪くなる
・「死は確かにやってくる、しかし今ではないのだ」… マルティン・ハイデガー(哲学者)
2便 何がいまを照らすのか
・「がんが治ったら一番に何をしたいですか」という問いかけは、治らねば一番したいことができないというメッセージを暗に発しています
3便 四連敗と代替療法
・代替医療ををめぐる問題は、エビデンス第一主義ではなく、希望と信頼の位相で話すべき
・医療現場ではじめてびっくりしたのは、医師も看護師も訴訟のリスクをかなり真剣に心配していること
⇒やはり、訴訟リスクを考慮すると、保身のため標準的なマニュアル通りの治療の一択になるのも必然なのでしょう
4便 周造さん
・「先生の家族が同じ状態だったら、どうしますか」 それは禁じ手の質問だ
⇒標準治療で効果がなかった宮野さんのお母さんの質問ですが、家族だからこそできる質問ですね
磯野さんからの”返信”で「禁じ手にはぶっとんだ」とあり、「修行僧宮野」の定義には妙に納得しました
5便 不運と妖術
6便 転換とか、飛躍とか
・「不運は点、不幸は線」
7便 「お大事に」が使えない
8便 エースの仕事
9便 世界を抜けてラインを描け!
・患者が困っているときや助けを求めにきたときは、それを受け止め、「そうだよね、そういう気持ちになっちゃうよね」などと理解を示すことが大切
⇒がんに限らず「適切な接し方」の難しいがゆえの重要性が求められている現代ですね
10便 ほんとうに、急に具合が悪くなる
この本の評価
■内容 :4.5
■読みやすさ :4.5
■実践しやすさ :4.0
■健康リテラシー:4.0
■総合 :4.5
もし、あなたが重病に罹り、残り僅かの命と言われたら、どのように死と向き合い、人生を歩みますか?
もし、あなたが死に向き合う人と出会ったら、あなたはその人と何を語り、どんな関係を築きますか?
その答えが、本書から読み取れます!
哲学者と人類学者のときに禅問答のようなやりとりは、高い知見も感じられます。
今日も、最後までお読みいただきありがとうございました!
著者
宮野真生子(みやの・まきこ)
福岡大学人文学部准教授。2000年、京都大学文学部文学科卒業。2007年、京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。
専門は日本哲学史。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか――「出会い」と「恋愛」の近代日本精神史』(ナカニシヤ出版)、『出逢いのあわい――九鬼周造における存在論理学と邂逅の倫理』(堀之内出版)、藤田尚志との共編著に『愛・性・家族の哲学』(全3巻、ナカニシヤ出版)などがある。
磯野真穂(いその・まほ)
国際医療福祉大学大学院准教授。1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。オレゴン州立大学応用人類学研究科修士課程修了後、2010年、早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文化人類学、医療人類学。 著書に『なぜふつうに食べられないのか――拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界――いのちの守り人の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想――やせること、愛されること』(ちくまプリマ―新書)などがある。
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